・次の文章を読んで、後の問いに答えなさい

　　自分は、いなくなる。共同の世界という表現は、今までとおりにある。それが自分の死に向き合うとき、思い浮かぶ風景だ。

　　肉体の死という自然の ａカテイに即して考えれば、そうなるしかないという風景だが、死を境とした自分のいる世界といない世界の

　 ｂラクサの大きさは、すんなり受け入れられるものではない。他人の死もそうだが、自分の死についても理不尽だという思いがつきまとう。

　　肉体の死がそのまま共同の世界における自分の存在消滅のときだというのが、素直に納得できないのだ。納得できないから、形を変えて

　　自分が存在しつづけるさまを想定する。自分のやったこと、やろうとしたことは、人びとに引き継がれて存在し続けるとか、自分の生前の

　　姿や志が身近なだれかれの心に思い出として保たれる、といったように。一方また、死の理不尽さは、死後の自分がこの世ならぬあの世で

　　生きるさまを想像させもする。先に死んであの世で待っている友人とゆっくり話ができるとか、今までやろうとしてできなかった木工細工に

　　あの世で取り組みたい、といったように。当人がそれをどこまで強く信じているかは別として、自分のいないこの世のイメージや、自分の

　　いるあの世のイメージを思い浮かべる心の動きに切実さが感じられるのは、あらためていえば、Ａ人間にとって死がなにかしら理不尽な

　　ものとしてあるからだ。人間とは、固体として自然に死ぬだけでは終わらず、市に向かって、あるいは視から出発してさまざまな思いを

　　1 紡いでいく共同的な、精神的な存在なのだ。

　　次にｃカカげるのは、詩人・茨木のり子が死後、友人・知人に送るようにと書き置いた手紙の全文である。死をめぐる思いが十数行の

　　2 清冽な言葉に見事に納められている。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（本文　 一部省略）

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（問1）本文中の傍線部　ａ～ｃのカタカナ部分を正しい漢字に直しなさい。

（問2）本文中の傍線部 1 と 2 の漢字の読み方をひらがなで書きなさい。

（問3）傍線部Ａ「人間にとって死がなにかしら理不尽なものとしてあるからだ」とありますが、なぜ死は人間にとって理不尽なものであると

　　　　感じられるのか、その理由の説明として適当なものを選びなさい。

　　　　　ア　人間の生前の姿や志を、身近な人に思い出として保ってもらおうとしても、その願いはかなわないから。

　　　　　イ　人間は固体として自然に死ぬだけでなく、死ぬことによって共同的、精神的な存在ともなりうるから。

　　　　　ウ　肉体の死という自然の過程にしたがうとしても、自分の死や他人の死を必然のの過程として容認できないから。

　　　　　エ　肉体の死によって生じる、自分が存在する共同世界と自分が不在の共同世界との隔たりを受容できないから。

　　　　　オ　自分のいないこの世のイメージもじぶんのいるこの世のイメージも、自分の死後にはともに幻影となってしまうから。